近松門左衛門 『曽根崎心中・冥途の飛脚 他五篇』

あのねえ、初音ミク経由で読もうとしたのはいいけれど、文楽なんか1回も観たこともないのに浄瑠璃の台本が読めるわけないじゃない。特にこの校注者が演劇としての浄瑠璃、人形の所作を重視する学説を唱える人らしく、ある程度浄瑠璃というものの動きを理解してないとなかなか読めない構成になっていて、無理矢理物語だけを抽出して読んではみるものの全然自分がこの本を味わえていないのがわかるのね。それでもまあ面白いというか興味深いというか「なんかこいつらすっげえ死にたがんな」とか「どーしようもない男ばっかだな」とかいう方向の風俗的な興味深さと(こういう世話物の先駆けだったそうな)、あとは心中や死を題材にすることで得る諦念を踏まえ透徹としたものなんだろうけど、浄瑠璃の語り、音曲のリズムを持った日本語の有り体に言えば美しさは感じる。
曾根崎心中・冥途の飛脚 他五篇 (岩波文庫)