有島武郎 『小さき者へ 生れ出づる悩み』

短編二つ。前者は自分の娘に向かって手紙形式で語りかけるように、そして後者は出会った人物に対して2人称で語りかけるように、と、相手を想定した情感豊かな文章が印象に残った。この、文章の腕力というのか、特に後者に顕著な、徹底されたリアリズムの上に加速度的に滾る暴力的なまでの感情表現には、圧倒されたしちょっとひいた。ごめんね。『小さき者へ』の父親像はわりと好きかも。

小さき者へ・生れ出づる悩み (新潮文庫)