迷走。

先週の木曜日だったかな、ついに心が音を立てて折れまして。ええもうぽっきりと。具体的には授業のコマ数を減らして「これで大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫」って唱えないと寝付けないくらい。なんかね、去年の自分の日記を読み返して凹むという裏技ですよ、毎日色んなところ行って楽しそうだな去年の俺は、みたいな。これをもう20倍くらい暗くした口調で脳の奥から囁き続けられてみろよ。そりゃ寝れねえよ。そんでまあ授業数を半分くらいに減らしてですね、じゃあ週一くらいでいいから色んなところ行こうぜと。映画でもいいし京都なら観光地にも困らないわけだしね。というわけで火曜日か水曜日の午後はふらふら色んなところ出歩こうと思うので、デートにお誘いの方はその隙を狙ってボクの秘孔を衝いて気絶したところを拉致してお誘いください。

んで今週は水曜日に京都文化博物館の特別展『トルコ・イスタンブール歴史紀行 トプカプ宮殿の至宝展』ってのに行こうかなと。何故ならばチラシに載ってる至宝が金色だったから。何が凄いのかがわかりやすいかなって。だって金ピカ=偉いだもの。まあそんな理由。一方水曜日はといえば授業の関係で、学内で一緒に昼飯を食べることも吝かではないと思ってくれてる(少なくとも反意を態度には現していないような?)3人の内1人と一緒にお昼ご飯を食べることが出来るので、授業でてご飯食べてから1回家に帰って荷物軽くしてから自転車で行こうと、そういう風に考えてたんですね。

それがしかし反動というかあの夜の恐怖感から逆に変なスイッチが入ってしまったというか、このお出かけに対し妙に気合が入ってしまってですね、昨日の内に手に入れた特別展のチラシなんか鞄に入れて学校に行くくらいの浮かれっぷりですよ。スキップそしてギャロップを二本足で成し遂げるくらいの浮かれっぷり。そんでその一緒にお昼ご飯を食べて(くれて)る人に「今日、今からこれ行くんだよ!」なんつってチラシを見せたりしてさ。んでその人が俺より世界史に詳しい人だからオスマン帝国にやたらと食いついてくるわけ。「これ、中国の陶器と西洋風の装飾が合わさってるのって凄いよね! オスマン帝国はいいよ、うん」とか言われちゃってさ。こっちもなんだか適当に決めた行き先が妙に褒められちゃってさ、テンション上がるじゃん。うん、ちょっと行き過ぎちゃったね。「あ、そうだ! そんなに行きたかったら今日行くのやめるから日曜日に行かね?」「いや、それは、いいや……」うん、まあこんなのかすり傷ですけどね、最近のボクにとっては。んでもまあその人の話聞いて俄然行く気まんまんになっちゃってさ。「トプカプって響きいいよね!」「可換環みたいだよね!」「カカンカンカカン!」なんて言ってみたりさ。そんなわけでその人と別れ、一度家に帰るの忘れて鞄が重いまま自転車で一路京都文化博物館へとボクは風になったのだ。

そういや2年前の受験の時に京都文化博物館のすぐ近くのホテルに延べ1週間くらい泊まったことを思い出し、なんだかそこに近づくにつれ当時の心境を克明に思い出して懐かしく思ったり、うわあこの辺って自転車止めれるところあんのかと不安になったり、京都文化博物館に駐輪所があることがわかって安堵したり、そこに自転車を止めていると何故か近くにいた警察官がじっと俺の方見てて「あー…なにかはわからないけれど疑われてる…そうか…存在してるだけで不審者だよね、俺……」と一しきり凹んだり、入場券買う時に「大学生一枚」「(小さな声で)トプカプですか?」「(とぷかぷ? 何それ変な響き)……はい?」「この特別展ですか!?」「あぁ……はい……(あ…そーいや…さっきもトプカプ展っての読んだわ……)」などというやり取りを経たりとまあテンションの乱高下を繰り返し遂にご来場ですよ。

あのねえ、金ピカ=偉いだとしたらトプカプ宮殿は超偉い。ミラクル偉い。数値でいえば30000エライー毎秒。「この文書は金を混ぜた墨で書かれ〜」って墨までか! もう何もかもが金ピカ。しかも超細工してある。すげえ細かい。隙あれば信仰告白の文字を彫ろうとする。すげえ。しかも金だけじゃない。なんかSDガンプラの部品みたいにやたら赤い透明の部品ついてるなと思ったけどあれ全部ルビーだ。緑のカラータイマーみたいに化粧箱の真ん中に鎮座ましわしてる無骨なでかい石はエメラルドっていうんだって。もう意味がわからないね。挙句には「トルコ石」なんて名前ついた石まであんだよ。まんまじゃねえか。ほんとにもうよくわからないけど兎に角、金が光ってて宝石が光ってて超偉かった。あとすげえ鞄が重い。自転車のかごに入れてたから気にならなかったけど重い。

んで特別展を見終わって(おいおい行く前の文章に比べて特別展本体の感想薄いな)、んで常設展は二年前に見たからいいやという感じで見流して(わりと面白いですよ、前来た時は各家ごとの蹴鞠のルールブックとか見たような気がすんだけど)、それから今日は2件ほど本屋さんに行こうかな、と。正確には漫画しか置いてない本屋さん。要するにボクのホームグラウンドな雰囲気を持つ本屋さんに。でもどっちもまだ行ったことなかったので、ネットでそれぞれ地図を調べると微妙に離れてるんだよ。距離はまあ自転車があるからいいっちゃいいんだけどさ、なんつうかその自転車がまたさ、四条は自転車通行禁止だったりで色々小回りがきかねえんだよ。下手すりゃ押してる方が邪魔ですよねみたいな。とにかくじゃあまあ裏道使ってでもいいから自転車で距離稼いであとは押して歩くべということにしてたんですよ、まあちょっと遠回りにはなるでしょうけどね。んでまあ1軒目をどうにか見つけて、んでうっかり漫画を5冊買っちゃってですよ。あの、RPGで言えば「もうcmizunaのどうぐは いっぱいで もう もてない!」って言う感じの鞄にそれを突っ込み二軒目の本屋に向かうんですけど、どうやらこれは寺町通りって言うまあモールみたいな、俺に関係あるところだけを取り出せば自転車が押しても入れないみたいなところらしいぞと。そんなもんだからその寺町どおりの周りを自転車を押しながら駐輪所を探すわけですね。あの辺りっていうとまあボクの苦手なザ・リア充みたいなのがうようよ歩いてて、それをボクみたいなザ・ブサイクが邪魔な自転車を押して歩く。もうこれだけで死ぬ理由には充分ですわ。どうにかその衝動をぐっと飲み込んでかなり遠いところに自転車を合法的に駐輪し、重たい鞄をちょくちょく持ち替えながらまたそのリア充の海を泳いでへーこら寺町通りに入り、寺町に入ったら入ったで修学旅行生とリア充がまだうようようようよ発生してるそのさなかを心を殺した俺が掻き分けて。どうにかその本屋に入ろうと。その本屋なら俺のホームグラウンドだから。きっとボクみたいな駄目な人が一杯いる本屋だからと。そしてその本屋を見つけて入ろうとしたらまあ、なーんか俺とは絶対一生接点を持たないだろうな、というタイプの女子高生が漫画見てたりしてるんですよ。頼むから俺の安息の地を蹂躙しないでくれと。アンタがたが幾ら有閑だか知らんからさ。

そのお店でもまた一冊漫画を増やしふとこの場所の座標を確かめるとさ、うーん、ちょうど京都文化博物館と一軒目の本屋の中間点にいるっぽいんだよ。なんていうのかな、あの各店ごとの地図ってさ、各自が勝手に縮尺とか調整してるじゃんか。それを3つも重ね合わせて一つの地図にして使ってたからもう意味がわからないくらいに相対位置がずれてんだよ。だってさ、2軒目の本屋からちょっといった角に「京都文化博物館この先まっすぐ」って書いてあんだぜ。まっすぐて。俺の迷走は。

あーもうこの徒労感というか情けない感じ? 去年の[がんばろう]タグっぽくて俺は凄く今気分がいいよ。