ショーペンハウエル 『自殺について』

岩波の青帯。近代哲学の人。wikipediaを見る限り*1、プリティな熊耳を装備していらっしゃる。
しっかしあれね、自分の浅学をひけらかすのもなんですが、哲学書の読み方は未だに慣れないね。論理の断定的な進め方にいちいち困惑してはいけないんだろうなあ。合ってるとか間違ってるとかではなく。理学書の読み方とは全然違う。というわけでこの本も、和訳が50年以上前というのも相まって個人的にはなかなか堅いなあと思って読んでたんですが、なんか訳者後書きにもあったけど、ショーペンハウエルって簡単らしいよ。多分嫌味かド変態なんだろうね、哲学人って。んまあ確かに文章として堅い感じはあるけど、その雰囲気は中身の深さに通じるものがあって、決して悪いわけじゃないというかむしろ良訳なんだと思うけど。中身もほんとに徹頭徹尾筋が通った話をしている、ってのはなんとなくわかった。
中身。人間は労働とかの運命から逃れられないけれど、けど一方、退屈というのも重大な逃れられない運命なのだよ、みたいな話が印象に残った。タイトルの『自殺について』では、どちらかというと自殺そのものについてというよりは、自殺を否定する論への否定、という感じで、自殺そのものはいいとも悪いとも言ってない。肉体的苦痛と精神的苦痛のどっちが強いかだよ、みたいな。そういう論はわりと好きだ、理系ぶってるみたいでアレだけど。
全体として。個体と物自体の話とか、1つ1つの話がその中で筋が通ってて、集中してしっかり見失わないように読めば、かなり良質のショーペンハウエルの入門書になるんだと思う。他の本を読んだことのない俺がいうのも胡散臭いなあ。まあでも100Pくらいで見た目は薄いし。古本屋で見かけたら救出してあげて下さいよ。


自殺について 他四篇 (岩波文庫)