国木田独歩 『号外・少年の悲哀』

やっと挿絵も数式も出てこないような本が読めた。こんなことなら浪人でもしておくんだったな。
そう、そういう意味ではこの本は凄くぐっとくる短編がいくつか、特に前半の『疲労』や『二老人』なんかぴったりだったね。
特にこの『疲労』、巻末の解説ではけちょんけちょんにけなされてるような、文庫で5Pくらいの短編なんだけど、個人的にはこりゃ凄いと思ったね。軽口をたたきながら用に追われ、最後は「死人のよう」に寝る。ある意味この現代だからこそ共感できるテーマをこの時代でやっていることと、それをたった5Pで切り取ってしまうその筆致と。すげえなと思った。


他だと、一人称だからこその風景描写ってのかな。例えば『少年の悲哀』での夜の海の描写は「僕」の「悲哀」を通じた描写で、だからこそ演出としてありありと想像できて、演出効果として素晴らしいものとなってると思う。


独歩は初めてなのでこのくらいで。『武蔵野』とかも読んでみたいな。遠子先輩も勧めてたし。


号外/少年の悲哀―他六篇 (岩波文庫 緑 19-4)