『鳶魚江戸文庫10 公方様の話』

 明治3年生まれで江戸幕府についての文献を読み解くことで知られた三田村鳶魚の、これまでの将軍の女好き事情を暴露したもの。江戸時代には幕府を開いて神様扱いされていた徳川家康に始まり、各将軍の大奥事情を、まあ下卑た野次馬根性で紐解いていくんだけど、そういう動機が完全に庶民感覚なんだけど、前提知識とかそれこそ"将軍"に対する元々のイメージ、それにそういう野次馬根性の対象になること自体とかが、妙に江戸時代に対する距離の近さを感じる。まあそれこそこの著者の生まれる数年前まで"将軍"というものが実在してたわけで、絶対的な距離は確かに近い、"歴史"になる前のことなんだなあ、という感覚がちょっと不思議。

公方様の話 (中公文庫―鳶魚江戸文庫)

公方様の話 (中公文庫―鳶魚江戸文庫)