三中信宏 『分類思考の世界』

 ちょっと種と亜種の違い(対象と用途によって使う定義が違うらしい?)を知る必要があったので、分類学の一般書をタイトルだけで探してkindleで買ったらなんか違った。種とは何かっていう問題提示のところもそこそこに(わりと抽象的な話で終わる)、それは生物学哲学の話も含むから、って生物学の枠を飛び出して形而上学の話に突っ込んでいく。そして、その学説を知るためには、その背景的な、学会のコミュニティの醸成する"空気"を知る必要があるとして、どんどん昔の話に進んでいく。その語り口もまあ色んなところに飛んで、学者から詩人から聖書からマンガから、古今東西を問わずに引用してきて、それで何かを言っているような言っていないような、という話が続く。何か言いたいことがあって、その説明に必要な材料を選んでいるという感じは全くなくて、まあ読み始めて半分くらいまではすげえ無駄が多いように思うけど、「まあそういう本か」と諦めると、いい言い方をすると著者の圧倒的な知性に対する敬意を抱けると、「色んなこと知ってる人が、それ全部使ってなんか語ろうとはしている」というのが少し分かる。まあ、急いで何か知りたくて読んでる身としては正直な感想は「新書でそれやられてもなあ……」だけど。新書に求めてるのは、分子系統学の受け入れられ方とか、それこそ"現在"の「学会の空気」だからなあ。最後の方に現在の話はちょっとあるものの。