唐辺葉介 『つめたいオゾン』

 2人の人間の思考が混じって自己を失ってしまう病気、に罹ってしまった2人の少年少女がモラトリアム的な施設の監視の下に生きる話。少女が、もともと自分の生きてる意味が感じられない、それならまだ分離している今のうちに少年のために自死を選ぼうとするところまでの空虚感、それを止められて更に病気が進行して穏やかに人格を失っていくことで、そのかつてあった人生に対する無意味さ、空虚感というのが、その底に必死に生きる意味を追っていた瞬間だったからこそ感じられたものだったのだ、というのが、最終盤にそれを感じる自我すらなくしてにこにこと並んで笑う2人と、その横で崩れ落ちて泣くその両親のギャップの哀しさから初めて気付かされる。この感情は、そうなのか。とても良かった。